「ブルー・ゴールド」の上映+「ウォーター・ビジネス」(モード・バーロウ著、作品社)の訳者・佐久間智子さんと東大生産技術研究所の沖大幹教授のトークショーに行ってきました。すごくポップでテンポが良かったけど、お二人もおっしゃっていたように次々といろんな問題が放り込まれているので、整理する場があってとても良かったと思います。
私が特に興味があったのが水道水とミネラルウォーターの話。指摘されていたように、バーチャルウォーターや人権としての水、ダムなど問題を提起するという面ではとても優れた映画でしたが、では個人レベルで何ができるか、というとたちまちシャワーの量を減らすだとか歯磨き中は水を止めるだとか尻すぼみになってしまっていたので、佐久間さんがそこに言及してくださったのは嬉しかったです。今までただの水を買うなんて何となくしゃくに障るからという理由でペットボトルの水は避けてきましたが、環境的な負担だけでなく、倫理的にもそれは間違っていなかったんじゃないかと思えました。ミネラルウォーターを採取して水道水よりはるかに高い値段で売るということは、水道の民営化と同じことなのではないかと思います。お茶やジュースも環境面を考えればなるべく買わない方が良いのでしょうが、少なくともこれらは嗜好品であり、企業には原価に上乗せして売る資格があります。ミネラルウォーターも嗜好品と考える見方もあるのかもしれませんが、他に飲料水を得る手段がないような場所でコーラより高い値段で売るというのは考えられません。Volvicの1L for 10Lプログラムなんかも、ミネラルウォーターを買うぐらいだったら水道水を飲んでその分浮いたお金を寄付した方がずっと利率が良いし矛盾がないはずです。実際、水道水を飲もう!という動きは各地であって、レストランで水を頼めばまずボトルウォーターが出されて課金されてしまうロンドンでも地方紙が中心となって水道水も選択肢に入れるようにWater On Tapというキャンペーンを展開したり、アメリカのTappening Projectでも水道水がいかに安全か、様々な情報を公開しています。
5年くらい前に同じ渋谷のアップリンクで「ザ・コーポレーション」を観てボリビアの水道民営化紛争について知ってから水問題に興味を持ったけど、沖先生の「民でも公でもうまくいくとは限らないんじゃないか」という疑問に対して佐久間さんの「民と民で戦わせるよりは公に仲介させた方がいい」という言葉が印象に残りました。
ウォーターフットプリントなどの「単純化表示」についても大勢の消費者を対象にするとどうしてもそのような方法が必要とされてしまうけど、「あの人が作ったんだからこれは安心だ」という人と人とのつながりのほうがよっぽど崇高だ、という指摘はとても鋭いと思いました。フェアトレードマークなんかも怪しくなっている今、消費の問題ってほんとに難しいなと考えさせられました。